2006年10月29日

ああ誕生日、されど誕生日 

「この種の手術で9時間半も麻酔がかかっていたのは新記録です!」。麻酔医がいう。僕の腰っぽねはエラク太く、ビッシリと詰まって隙間が無いらしい。執刀医が汗だくにになって言った。「7時間20分もかかったけど、大成功ですよ!」。腰部脊柱管狭窄症、内視鏡手術をしてくれたのはその手術で定評ある名医である。

穴を背骨に2センチ開け、そこから、先がダイヤモンドでウン千万円する内視鏡を入れて、脊髄神経を圧迫している骨を削るのだ。傷が小さいから通常の手術にくらべ患者の負担が実に軽い。ゲンに僕は今、こうやってベッドに腰掛けてパソコンを打っている。歩行器につかまり手術後の回復室から15メートル程歩いて部屋に来たのが今朝、手術が終わりたった13時間目だ。数日経てば通常歩行可能。従来の切開下の手術ならされに1週間は入院である。

 今日は何と僕の誕生日!始めての酒抜き誕生日。「ビールを一口飲んでは駄目ですか?」「冗談じゃありません!」看護婦さんはにべもない。他の部屋に聞こえないように声を潜めて家内と2人でハッピー、バースデーを歌う。点滴のクダをつけた手で毎回ワンパターンのご飯に味噌汁と租采の病院食を食べる。病院食が美味いなどということは、僕が婦人科に入院すと同じほどあり得ない!食欲はある。口を動かすたびに排尿と背骨の穴から出る血の染み出た袋がゆれる。

 小錦と高見山を併せて大きなクシャミをさせたような、ブンブクレに腫れ上がった僕の下あご。それは長時間うつ伏せになり続けて手術を受けたためなのだが、噛む度にフクれたあがった唇に歯がひっかかる。ああ誕生日、されど誕生日。
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2006年10月22日

国民オペラ 

 腰部脊柱管狭窄。これが僕の病名。昨日、手術の準備で脊髄造影。その後頭痛予防で、6時間ベッドに横にされれ、ぶと入れたテレビでオペラ「リゴレット」が歌舞伎(風)衣裳で日本人歌手たちがイタリア語で歌っている。途中からだが、変テコで全く面白くない。

 オペラがイタリアで406年前に始まって以来、イタリア以外で自分たちの国のオペラを創ろうという試みが数多くあり、多くの作曲家が自国の言葉で作品を書いた。お客様の篩を通り常打ちレパートリーとしてまず残ったのはモーツアルトの「魔笛」である。だが「魔笛」はまだ国民オペラの範疇には厳密には入らない。自国語で、自国を舞台とした物語を、自国の伝統的音楽技法で、自国の作曲家が作曲したオペラを国民オペラと音楽史上では言い、ウエーバーの「魔弾の射手」がドイツ最初の国民オペラとなった。「魔笛」は何時とも何処とも解らない国での御伽噺なのである。国民オペラになったのはムソルグスキーの「ボリス・ゴドノフ」、バルトークの「青髭公の城」などーー(いずれも僕のレパートリー)。我が国はオペラ後進国として、やっと数年前に新国立劇場という素晴らしい入れ物を持った。だが日本国民オペラを持たない悲しさで、欧米のオペラ座と同じような出し物で公演せざるを得ない。だが、この「リゴレット」のような木に竹を繋いだような上演では、これは日本人の為のオペラだ、と呼べる作品は絶対に出来ない。

 手術は明後日。明日の執刀医の説明で、狭窄で脊髄神経が圧迫されている箇所が1箇所か2箇所か、手術時間が2時間かそれ以上なのかが判明する。内視鏡で3000例の手術暦を誇る名医だ。信用しよう。
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2006年10月15日

外来崇拝

前々回のこのコラムで、外来オペラ引越し公演の一番高い5万円以上の券が公演間際になって1万にダンピングされたことを書いた。そしたら今度外来若手はリート歌手のリサイタルの9000円の券を声楽専門家達向けだが、5000円で買わないかと言ってきた。

「タカオ、お前の国にすげーギャラで招聘されたぞ!」その昔のこと。ドイツ・ケルン歌劇場の同僚テナーが僕にホクホク顔で言ってきた。口外しないという約束で聞き出したその額はドイツで彼の通常のギャラのウン倍だった。――「日本はどうして法外なギャラを払うのですかね?」。これもイタリアの歌劇場監督が僕に最近言ったことである。

日本人歌手のウン倍、殆ど一桁違うギャラを著名外人歌手たちは、日本に来て押しなべて得ている。しかし、この頃は日本の聴衆はもう外来のバカ高い券代に食傷して買わなくなってきたからダンピングが起こるのだ。そのリート歌手の券は最高9000円から5000円。邦人歌手のリサイタルは4000円以下。共に一流歌手。オペラだと高い外来が5−6万から1万円くらいで、邦人オペラは1万5000円くらいから3000円ほどである。皆さんはどう思われますか?やはり外人の方が間違いなく上手いから、高くてもいいのでしょうかね?

外来崇拝国日本という特質を利用し、著名演奏家の法外なギャラを、相手の言うままに受け入れて、日本の他の業者に抜かれないように、数年前に契約する。歌手の場合にはその数年間に旬を過ぎて何度も来日し、庶民が及びもつかない値段の券は売れない。だからダンピングをする。我々日本人演奏家はしない、元々安いのだから! 外来アーテイストの招聘者・呼び屋は、芸術推進より金儲けが目的であり、その商法は破綻し始めている。
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2006年10月10日

NHK合唱コンクール

びっくりした!10年以上も昔に観た同じNHK教育テレビ学校合唱コンクールのレベルとは格段に上になっていた。あの頃は、小中高ともに必死に、音程を、音色を揃え、一緒にクレッシェンドを、デイミニュエンドをし、高度に訓練された軍隊の、顔をこわばらせた行進のようだったのだが、昨日と一昨日観たのは笑顔を浮かべながら詩の内容を表現しようという子供たちの笑顔の演奏だった。

 子供たちは必死で、そして嬉々として、青春のひと時の生命をかけて歌っていた。僕も早大に入ってグリークラブ(男声合唱)に誘われて勉強そっちのけで夢中になり、オペラ歌手になった男だから、現代の非行少年、登校拒否学生などを考えると誠に快哉を叫びたくなる画像だった。得点を競うコンクールのためか。自由曲の選曲が同じようなものにかたよっていたが、選曲だけでなく、指揮者の能力によって演奏が全く違ってしまうのは、特に子供たちの場合には宿命的なことである!

 参加した学校は全国で2600校を上回る。大学、職場、一般、ままさんコーラスを入れると合唱人口は今や100万を超えるか!そろそろ総合テレビでも取り上げては!
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2006年10月05日

オペラのダンピング

外国からの某オペラ引越し公演。最高席は5万を超える。それが東京公演10日程前に半額になった。――裏からそういう情報がはいり、知人に2枚世話をした。そして初日数日前にはそれが何と1万円にダンピング!すべて裏情報での取引。

 例えば飛行機には、登場期日指定、搭乗確定が1日前、などの規制条件がつき正規の料金を大幅に下回る券が公然と販売されている。それに較べてオペラは何と姑息なんだと必ずやお客様からお叱りを受けるだろう。

 東京は外来オペラ過剰で、スター歌手は色々なオペラを掛け持ちで来日。歌劇場の名と出し物が変わるが主演者は同じでは、法外な値段をつけても客は来ない。5万を超える引越し公演はもう不可能になるだろう!
posted by opera-okamura at 17:50| Comment(0) | 日記