2008年06月29日

請う、ご意見!

僕以外には、まだ誰も手をつけてこなかった、日本の伝統和芸を武器とした新モノオペラ「松とお秋」の今年の再々再演が、まずルネ小平公演で昨日無事終わった。

永いことヨーロッパで歌ったが、13年間の歌劇場専属生活で、又、観客としての経験から、わが国の、落語、浪曲、講談などの伝統和芸、一人の演者が同じ場所にただ座り、衣裳も替えず、照明も使わず、何役も演じ分けるのを見たことは無い。これをフルに使ったモノオペラ。僕一人で全9役を演じる。

神田道子さんという才女が主宰するイル・フィオーレというイタリアを研究する会の創立15周年事業として昨日は上演され、客質も大変良く、これまでで一番の出来だった。特に、これまで、今一だった「松」の終わりでも、間髪を入れずに拍手が来た。だが僕はまだまだ先があると反省している。

新しく書き下ろしていただいた、紗幕の画が「松」「お秋」共に一新し(浦辺和巳・作)、安屋台―「松」、ミニ安女郎部屋―「お秋」が舞台センターにあり、簡単だが化粧し衣裳を着けた僕が演じる、という舞台構成は屋上屋を重ねているのではないのか? 伝統和芸で演じる浪曲も講談も落語も、演者一人以外には何もないのだ。このモノオペラには照明と音響までついている。

皆さんに是非お願いしたい。7月6日(日)13:45時開演、江東区文化センター(東陽町より徒歩5分)での公演をお聴きくださり(全自由席・4000円。電話:03−3501−5638)、このホーム頁に、僕の演技、歌、音楽(ピアノとクラリネット伴奏)へのご意見をお寄せいただきたい。

これより安いオペラはない。日本のオペラを盛んにするために、先鞭をつけたと自負している。通常のオペラ公演は1万円ほど、外来公演は5万円もするのだ!
posted by opera-okamura at 12:23| Comment(0) | 日記

2008年06月21日

鏡とにらめっこ

連日鏡に接して、どまん前に座り、前編「松」と後編「お秋」の練習に励んでいる。山本周五郎の原作を自分で脚色した、人足・松と遊女・お秋という江戸社会の底辺に生きる薄幸の男女の悲哀を描いた物語だ。

 通常のオペラでは,必要がある場合は、鏡から距離をとり、全身を映して見ながら練習をする。オペラの練習の主たるものは自分の歌う役の歌の練習で、それを練習ピアニストと一緒にやる。だが今度のオペラは僕一人で9役を演じるモノオペラ。それもわが国伝統の話芸、浪曲や落語、講談などの、ただ座っているだけで、衣裳も替えず、舞台照明も当てず、一人で何役も演じ分ける、他の国に類を見ない話芸を武器としたオペラである。だから観客の視線は僕だけに集中するので、顔の表情を通常のオペラより強く細かくせねばならない。テレビでカメラが表情を追ってアップしてくるときの演技である。

さっちゃん、犬のお巡りさんで知られる大中恩が、浪曲の三味線に当たる音楽を作曲した。日本語に音楽を乗せるのが無類に上手い大中の音楽は、浪曲の伴奏を遥かに超えて、オペラの中でアリアと呼ばれるものなどを両編でいくつも書いた。

だから磯辺周平(クラリネット・N響首席)と安田裕子(ピアノ)と、こんなに練習を多くしたことがない、と磯辺が言うほど何度もあわせたが、その他に安田君と二人でこれも何度も何度も、そして、家内に楽譜を見ていてもらって、鏡に向かって僕一人で、これも何度も何度も、そして又、何度も練習しているのである。

あの素晴らしい伝統和芸は、悲しいかな僕が子供の頃にくらべて下火になってしまったが、まだテレビがない頃、ラジオにかじりついて、広沢虎造の浪曲や、徳川夢声の語りを聴いていたものだった。

この全く新しい、誰も手をつけたことがなかったモノオペラがヒットするか否かは僕の演技にかかっているが、演出するのは他ならぬ僕。自分で自分を演技するのが如何に難しいかは、鏡に向かってやってみなければ解らない!自分が舞台にいると、客席で見ると照明も音響も、どうなっているのかは後で、収録したDVDを見るしか解らないし!落語の名人たちも、鏡と睨めっこで練習したのかな?
posted by opera-okamura at 10:51| Comment(0) | 日記

2008年06月14日

喜寿記念コンサート

10月25日の喜寿の誕生日には、東京・浜離宮朝日ホールで記念の想い出の歌リサイタルを歌う。まだ出来て間もない上野の東京文化会館(大)で、トウルーズ国際声楽コンクールで優勝し帰国した第一声のヘンデルの「セルセ」からのアリア「オンブラ マイ フー」。ケルンの第3シーズン初日にやっと歌った、バスの極め付きのアリア、ヴェルデイの「ドン・カルロ」からフィリッポ2世の「寂しくも一人眠ろう」。イスラエルフィルとの演奏旅行中、テルアビブの海で二人だけで遊泳した指揮者・イシュトヴァン・ケルテスが溺死し、急遽昇格して指揮台に立った合唱指揮者と演奏旅行を続けたハイドンのオラトリオ「ネルソン・メッサ」のアリア「クヴィ トッリス」。急病のタルヴェラの代役で急遽3日の準備で飛び入りで歌ったミュンヘン国立歌劇場でのムソルグスキーのオペラ「ボリス・ゴドノフ」から「ボリスの死」などの想い出を語って,著名なイタリアとドイツの歌曲と共に歌う。―――主宰:朝日新聞社 ミリオンコンサート協会―03−3501−5638、で前売り中、全席指定・5000円――

 1979年、およそ30年前に帰国してからの僕の住まいは、都内駒沢のオリンピック記念公園のすぐ近くのマンションである。ここに住んだのが良かった! 住み始めて5年後、僕たち夫妻は公園を散歩し始めた。家を出て公園を一周して帰ってくると約1時間弱、6500歩ほど。始めはくたくたになったのが、今では一周してきてから、2時間のリサイタルの曲目全部を一気呵成に歌ってなんでもない。時には全曲を2度繰り返すこともある。公園には都営トレーニングセンターがあり、ローまでの交通事故の後遺症で、身障者手帳を持っている僕は無料で使用できる。そこでのおよそ1時間15分のトレーニングが散歩を始めて更に5年後から加わっている。往復と着替えなどを入れると全部で約2時間半強。これが週1回から3回。この環境を利用して体調を保っていなかったら、果たして今も歌っていただろうか?

 ジュセッペ・タッデイーー70歳代最後まで、テオ・アダムーー80歳の誕生日まで、ハンス・ホッターーー85歳まで、と歌った。彼ら3人は皆、僕と同じバス・バリトンの声の伊独の名歌手たちで、長寿歌手の最高齢者たちでる。高音歌手は早く始まり早く終わるが、低音歌手は遅く始まり、遅く歌手生命を終える。マイクを持たない歌手は1回歌ったら2日間の休みを取らねばならない。ピッチャーより間隔は短いが同じように舞台に上がる回数はコントロールせねばならない。そして、週に一回は2時間程をフルヴオイスで、客前であろうとなかろうと、歌い続けねばならない。これが最低の声を保つ条件である。

これを続けて、次は傘寿記念日コンサートを歌う!
posted by opera-okamura at 12:28| Comment(0) | 日記

2008年06月06日

三井住友海上文化財団派遣コンサート

一昨6月4日は宮崎県門川町で歌った。三井住友海上文化財団は大阪や名古屋などのような大都市ではなく、クラッシック音楽会を聴く機会の少ない比較的小さな町に、色々なジャンルの演奏家を、そのギャラ、旅費、滞在費を全額負担して派遣し、既に19年前からコンサートを地方の町と共催でおこなってきた。その入場料も1000円ほどと安い。この企画の第一回は1990年、新潟県小千谷だった。僕は名誉なことに、その新潟県小千谷での第一回と一昨日の第五百回を受け持った。毎年数回のリサイタルを、沖縄から北海道までのどこかで歌わせていただいてきた。

門川のお客様はレベルが高かった。歌手に上手下手があるように、お客様にも松竹梅がある。

「おうちにかえろうよ!」大きな声で、抱かれているお母さんに訴えたり、客席最前列に陣取った男性が、歌う僕の指揮をしたり、最弱音で歌っているときを狙い済ましたかのように携帯電話の呼び出し音楽が鳴り出したりーー。いわば非意図的なそういう迷惑聴衆の他に、例えばシューベルトの歌曲集「冬の旅」の最後の「辻音楽師」が余韻を残し静かに終わるやいなや、この曲で最後なんだぞ、おれはそれを知ってるんだ!と言いたそうなフライイングの拍手。――などなどの悪い体験には、永年歌っていると、何度も出会ってきた。

合唱を歌ったりして、歌好きの多い門川のお客様の反応は実に良かった。オペラ「ドン カルロ」からの、スペイン国王フィリッポ二世のバスの極め付きのアリア「寂しくも一人眠ろう」を自分でも歌う男性が、サイン会の席の前に現れ、僕が拙著の中でその難しさを書いたことを指摘されながら、賞賛の言葉をかけてくれた。あまり独唱会では聴けない曲だからだろうがーー。「これは僕の手製のプロペラとんぼです。――半日ほどかけて作りました。10万円でも売りませんがーー差し上げます!」その方は福岡大学のグリークラブ出身。本業は廃棄物処理を管理する事務局長。プロペラとんぼの会の会長さんが、もう一つの顔。多分、合唱ででも、いや独唱ででも、人生をエンジョイされてることだろう。初めての僕でも飛ばして遊べるそのプロペラとんぼを大切にしょよう!

思い出すと小千谷での初回に歌ったときに、サイン会に現れて、僕のパワーを欲しいからと、妊娠数ヶ月のおなかを撫でて欲しいと申しだされたご婦人の、あのおなかの子は今では立派な成人式を目前にしていることだろう。―――歌手稼業も悪くはない!
posted by opera-okamura at 14:26| Comment(0) | 日記