2008年07月31日

619円の夕食

 「ご注文は?」机上の呼び鈴を押すと、間髪を居いれずにウエイターが、膝まづかんばかりに近づく。「なすとほうれん草のミーとスパゲッテイ、それに生ビールとほうれん草のベーコン炒めを」「かしこまりました」彼は、僕の家内の注文と合わせて注文を復唱して、出て行ったと思ったら、あっという間に我々の今夜の夕食が机上に並べられる。−−僕はヨーロッパ生活が長いが、日本のファミリーレストランほど、安くて、早くて、サービスが良くて平等で、何よりも美味しいレストランを知らない。このファミレスは、本日の朝刊で、経営の騒動が問題になっていたすかいらーく系のガストである。パスタを日本で注文すると得てして、クノール製の缶入りパルメジャーノチーズとタバスコが横に置かれるが、ここでも例に漏れず青い缶と赤い瓶が添えられてある。世界中何処でも同じな青と赤の添加物は別として、この、なすとほーれん草のミートソーススパゲッテイは旨い!100グラム以上はゆうにあるだろう。麺が乾麺なのは値段からして致し方ないが、アルデンテの茹で方といい、粘つき方といい(多分、本場のイタリア製?)、ミートソースのなすとほーれん草への絡み方
といい、イタリアのレストランと遜色ない!−−デニーズのオムライスのデミグラソースもそうだが、日本のファミレスは、−−小さな子供たちを幼稚園の遊技場よろしく大声を上げて飛び跳ね回るままにしている、お母さんたちさえ居なければの話だがーー旨い!スパゲッテイは税込み619円なり!−−ガストよ、経営はどうでも、君たちは頑張れ!
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2008年07月24日

ピンカートンの悪口

オペラ「マダマ バタフライ」。これがロンドンで上演されたときにはピンカートンの名前はB・F Pinkerton ――ベンジャミン・フランクリン ピンカートン。略してB・F Pinkertonなのに、それはド阿呆/Bloody Foolということになってしまうから、F・B PinkertonとFを先にBを後に引っくり返した、という話しを前回書いた。ロンドンの英国人客の哄笑をおもんばかったのである。確かに、自分子を宿した蝶々さんを3年間も置きざりにして、挙句の果てには金髪の妻を同伴して蝶々さんを日本に尋ねる、アメリカ軍人ピンカートンはド阿呆だから! 実は、オペラ史上最悪の不成功の一つに数えられるミラノ・スカラ座での1904年2月の初演に書かれた、ピンカートンの歌詞:畜生づら/musoの3人の日本人召使を呼びつけ、「砂糖漬けのクモとハエをもってこい。シロップのかかった巣と消化に悪い酒と、日本のむかつく珍味もだ」と命じる部分も、初演後3ヶ月で再演したブレーシャ版では削除されていた。これは日本の聴衆をおもんばかってのことではなく、アメリカ軍人ピンカートンの下司ぶりを和らげるための==ここからは文字化けした部分の補筆です==ものであった。==文字化けは西尾氏からの投書で知りましたが、それには、上記した削除は最後の版、ロンドン版で初めて削除されたようだとありました。早速調べますが、文献では、上記したようにブレシャ版で削除されたとされてました。初演版、ブレシャ版、ロンドン版、パリ版と4つある「版」とは何でしょうか。それは活版印刷工場にて組まれ印刷されたもので、同じ工場でも職人に出される原稿が違っていると別なものになります。原稿を創るのがプッチーニ只一人なら同じ削除でしょうが、いや彼一人でも時には複数の工場に渡す原稿で違った削除をしてしまう場合があり、それで、微妙に違う削除がある「版」が出てしまったのではないか、と思うのです。今のようにFaxやメール、インターネットでたった一つの原稿を配布することが出来る世の中ではなかったのですから。とにかく西尾氏に感謝いたします==是非、来8月24日(日)16:00〜17:30時、ヤマハ・リフラプラス(JR新宿駅・新南口1分)での小生の講演「蝶々夫人の過ち」お聴きください。DVDを聴きながら、何処がどう日本を間違った「歌詞」なのか、そして、如何に日本が蚊帳の外におかれたかを詳しくお話しします。03−3354−0020 一般4100円、NPOみんなのオペラサロン会員とヤマハFC会員3000円。
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2008年07月16日

ブラデイ フウール/ド阿呆

 Bloody Fool==ひどい馬鹿。ド阿呆。英国でのこの罵り語はアメリカでは使われてはいない。

 オペラ「マダマ バタルフライ」の中のアメリカ海軍士官・ピンカートン(テノール)のフルネームはベンジャミン・フランクリン ピンカートンで、15歳の長崎芸者・蝶々さんと結婚式――実は長崎に一時滞在する外国人と日本女性の同棲許可式。神官がおはらいをしたりするのは間違い。長崎の官憲がピンカートンと蝶々さんの同棲する家に出張してきて許可を与えるもの-------で、官憲はピンカートンのフルネームをベンジャミン・フランクリン・ピンカートンと呼ぶ。

 その結婚式の前に、蝶々さんはピンカートンを友人たちに紹介するのだがその時には、フルネームを略して、B・F ピンカートンと呼ぶ。


 1904年、ミラノのスカラ座でのこのオペラの初演での大不成功、そして、僅か3ヵ月後のブレーシャでの再演では、一転して大成功に終わったこのオペラは、今度はロンドンにて再演され、その後1906年末に、パリにても上演されて、現在世界中で上演されている版となったのだが、そのロンドン上演では、B・F ピンカートンでは、ド阿呆のピンカートンと蝶々さんは夫を紹介することになってしまうので、窮余の策として、B・Fを逆にして、F・B ピンカートンとした。つまり前後でピンカートンの名前はフランクリン・ベンジャミンとベンジャミン・フランクリンという、違って出てくるチンぷんカンぶんな次第になってしまった!誰がこんなことをしたのかはしれないが、作者のプッチーニも二人の台本作家も存命だったのに、何故か、彼らからの抗議はなしに、今でもそのちぐはぐな名前紹介のままに世界中で上演され続けられている。

 これはロンドンの客の評をおもんばかってのことだ。ではこの日本の客はおもんばかれているのか? いやいや! 日本は一神教の国だと思わせたり、神仏を混同したり、と、その歌詞にはおかしなことが多々あるのに、日本の新国立劇場においてさえ、その過ちは直されもせずに、間違ったまま上演され続けているのだ。

 その詳細をお知りになりたかったら、どうか8月24日(日)16:00〜17:30、ヤマハ リフラ・プラス新宿(JR新宿駅・新南口1分)での小生の講演「蝶々夫人の過ち」お聴きください。03−3354−0020 一般4100円、NPOみんなのオペラサロン会員とヤマハFC会員3000円。
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2008年07月09日

やっと出た、初日!

7月6日(日)江東区文化センターにて「松とお秋」をご鑑賞いただいたお客様、有難うございました!6月29日の前ブロッグで書いたことにご賛成でしょうか。

‘03年5月30日、5年以上前。これが拙宅での「松」の試演会。周五郎の原作から脚色を始めたのがその1年半前の’02年正月。同じ岡村というオーナーがやっている、玄界灘の小さなリゾートホテルでのことだったから、手がけてから6年半かかったことになる!やっと売り物になる新モノオペラ、誰もまだ手をつけなかった日本伝統の話芸を武器とした和魂洋才のオペラが出来上がった、と確信する。勿論、まだ改善すべき余地は多々あるが、原作の;亡き山本周五郎、作曲の大中恩、そしてクラリネットの磯部周平、ピアノの安田裕子、裏方のスペースゼロの皆様、に心から感謝する次第である。

 ルネ小平で撮影した、客席中央最後方での全舞台と客席を俯瞰する固定カメラでのDVDを参考にして、僕はこの江東区での公演から新しく入った浦辺和己さんが描いた、紗幕の挿絵と、その下の屋台―松、畳―お秋、で歌い喋る僕、の舞台中央部に客の視線を集中させるために、舞台前上下に分かれたピアノとクラリネットの前に「ついたて」を立てて客から隠した。

 ワーグナーはバイロイトに自分の手になるオペラだけを上演する祝祭劇場を建て、オーケストラを舞台の下に潜らせた。19世紀末のことである。昨年夏に鑑賞したオーストリアのメルビッシュでのオペレッタ祭ではオーケストラは完全に舞台下に置き、ブレゲンツでの湖上オペラ祭ではオーケストラは客席後方の地下の建物に置き、そこからの映像を何十個と舞台上に置いたモニターから指揮者ごと写し、――勿論、舞台上の映像もオーケストラ側に流しーー公演していた。いずれも、主たるその目的は、演じられている劇とは無関係なオーケストラの楽員の動作を客の視線から隠すためである。

 江東区文化センターではオケピットを創るためには最前列の客席を数列取り払わねばならない。オペラカーテンでも、舞台最前列の袖幕でも、ピアノとクラリネットを隠すことは出来ない。仕方なく、ついたてを借りて立てたのである。「松」で僕は、下袖に、悪妻の目を盗み、息子に開けてもらった家の戸から忍び入る演技をせねばならない。ピアノとクラリネットを隠すだけではなく、あの際は、ついたて以外には方法がなかったのである。

 松とお秋で衣裳と化粧を変えたのも効果があったようだ。何よりも僕がこの二つのモノオペラを一生懸命勉強をした。お陰さまで、両作品ともに、盛大な拍手をいただいた。

来年は6月27日に上野の旧奏楽堂で再々再演をする。「松」の物語は浅草・浅草寺、つまり台東区である。
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