2012年04月15日

虫の知らせ =4月15日 記

数日後、今は平穏に波打つ人気のない海に浚われ、あたら持って生まれた指揮者としての世界的才能を散らすことになる、
などとはつゆ知らず、ケルテスは僕と砂上で語り合っていた。世界の火薬庫中東。その中でイスラエルだけは、飛行場、国境線、
など、廻りのアラブ国家と接する場所は厳重の上に厳重な警護下に護られていたが、その中は、ヨーロッパの平和な町のたたずまい。
国境から見ると外は茫々荒涼たる砂漠なのに、こっち側のイスラエルは緑の木々と畑に覆われ、ビルや瀟洒いすらえるな建物が立っている。
まさに世界7不思議の一つだった。「せっかく築き上げてきたキャリアーも、一瞬の油断で消し飛んでしまうな!気をつけないといかん」。
イスラエル軍の隊列の中の一台のジープが崖から転落し何人かの死者を出した事故のあとを振り返り、彼が述懐したのは、あれは虫の知らせ
だったのだろうかーー次号に続く。
posted by opera-okamura at 22:25| Comment(2) | 日記

2012年04月09日

ひとときの隙 =4月9日 記

事故のあった海岸の安楽椅子に寝そべってケルテスは僕に言った。事故の日の数日前だった。「アフリカで野獣ハンテイングをやって年の半分は暮すんだ」。「いきなり成功の道を歩きはじめると
人間はそういう気持ちになるのかな」。僕はケルン歌劇場と市の音楽監督、他、世界の指揮者として歩み始めた彼の横顔を盗み見た。海は穏やかに横たわり、人影はあたりにない。ハンガリーの難民でイタリアに逃げてきた、苦しい過去の刻みは顔のどこにもない。人を従わせる指揮者と言う身分を全身にみなぎらせた中年の精悍な男は、しかし、逆に野獣に襲われたらひとたまりもないだろうと思わせる隙だらけの姿をひととき見せていた。
posted by opera-okamura at 12:42| Comment(0) | 日記

2012年04月01日

飛び込むケルテス =4月1日 記

「下で泳ごうぜ!」ケルテスが僕ら3人に提案した。小さなホテルのプールサイドから海岸に通じる扉をあけて数十段下りればそこは地中海の海岸。この真昼の陽光の下
を海岸に眼を転ずれば泳ぐ人はおろか、日向ぼっこをする人影も殆どない。しかしまだ4月の半ばだから、如何に中東のテルアビブ近郊とはいえ波は荒い。「ここにいるわ」
ルチア・ポップとイルゼ・グラマツキーは、金髪が海水に濡れるのを嫌がって断わり、交通事故の右足を持ち泳ぎの下手な僕も「一人で泳いだら」とにべもなかった。「とにかく
下に行こうぜちゅ」ケルテスは泳ぎに自信があるらしい。わき目もふらずに降りて行く彼に我々3名はしぶしぶ従ったのがいけなかった!扉口には番人があぐらをかき座って居て、
何やらヘブライ語でぼそぼそと言うが、誰も意に介さず、というよりは何も理解できずに、がらんとした広大な海岸の砂浜に4名の闖入者として歩いて行った。後で解ったこと
だが、どこかに遊泳禁止の黒い旗が立っていたそうだ。「臆病者!」ケルテchスは彼の他の唯一の男性である僕に笑い叫ぶと、修学旅行中の高校生のように、一目散に押し寄
せる波に向かって飛び込んで行ったーー次号に続く。
posted by opera-okamura at 16:51| Comment(0) | 日記

=4月1日 記

「下で泳ごうぜ!」ケルテスが僕ら3人に提案した。小さなホテルのプールサイドから海岸に通じる扉をあけて数十段下りればそこは地中海の海岸。この真昼の陽光の下
を海岸に眼を転ずれば泳ぐ人はおろか、日向ぼっこをする人影も殆どない。しかしまだ4月の半ばだから、如何に中東のテルアビブ近郊とはいえ波は荒い。「ここにいるわ」
ルチア・ポップとイルゼ・グラマツキーは、金髪が海水に濡れるのを嫌がって断わり、交通事故の右足を持ち泳ぎの下手な僕も「一人で泳いだら」とにべもなかった。「とにかく
下に行こうぜちゅ」ケルテスは泳ぎに自信があるらしい。わき目もふらずに降りて行く彼に我々3名はしぶしぶ従ったのがいけなかった!扉口には番人があぐらをかき座って居て、
何やらヘブライ語でぼそぼそと言うが、誰も意に介さず、というよりは何も理解できずに、がらんとした広大な海岸の砂浜に4名の闖入者として歩いて行った。後で解ったこと
だが、どこかに遊泳禁止の黒い旗が立っていたそうだ。「臆病者!」ケルテchスは彼の他の唯一の男性である僕に笑い叫ぶと、修学旅行中の高校生のように、一目散に押し寄
せる波に向かって飛び込んで行ったーー次号に続く。
posted by opera-okamura at 16:51| Comment(0) | 日記